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2冊目 死へのイデオロギー
死へのイデオロギー

パトリシア・スタインホフ〔著〕 / 木村 由美子訳

岩波書店 (2003.10)


評価:☆☆☆☆☆

 最近、久々に読んだ連合赤軍関係の本が死へのイデオロギー  日本赤軍派である。著者はテルアビブ空港襲撃事件の犯人である岡本公三へのインタビューから始まり、そして日本赤軍による血なまぐさい同士粛清、さらに日本の新左翼運動を壊滅に追いやったあさま山荘事件を社会学の立場から追いかけて日本中を駆けずり回ったアメリカ人である。

 日本の新左翼(この名称自体がもうすでに懐古趣味の領域であるのは疑い得ないのであるが)の起こした事件を日本文化の外に居る人がどう読み解くのかに興味が沸いて、買ってしまった。

 連合赤軍事件は、読むたびに暗澹たる気分にさせられる。その理由は、夢を共有していた人々同士が殺し、殺されていく、その過程があまりに過酷で残酷であることに比して虐殺の理由となる原因が極めて些細なものであること、そして、なぜ無意味としか思えない同士討ち(この場合同志討ちというべきか)を彼らが倦むことなく続けてしまったのか、という2点に絞られるのではなかろうか。なにしろ、彼らは仲間が「共産化を遂げていない」という理由で、12名もの男女を殺害しているのだ。

 この間の経緯を知りたい方は、連合赤軍と「二十歳の原点」というサイトが非常に良く調べてあり、なおかつ簡潔に事件の流れをまとめておられるので参考にしてみてください。

 私は現在27歳。まもなく28歳になる。殺し、殺された人々の当時の年齢を見ると、事件の主犯である旧赤軍派の森恒夫、旧革命左派の永田洋子の2名が27歳。私と同じ年である。彼らは丁度今頃の時期には合流して連合赤軍を結成し、合同軍事訓練と称して山に篭っていた。翌年2月28日、あさま山荘陥落によって幹部が全員逮捕されて壊滅するまでのその過程で12名の仲間を殺害しているのであるが、そのうちのほとんど、10名が私よりも年下(最年少21歳)であり、一人が私と同じ年(山田孝;粛清による最後の犠牲者)、一人が年長(山本順一;28歳)である。つまり、もうまもなく私が歳をとったら、粛清の犠牲者(犠牲者に限らず、参加したメンバーという点でも)は全員の年齢が私以下ということになる。

 そして、28歳というのは死刑判決が間違かったであろう、森恒夫が刑務所内で自分自身を「総括」した年齢である。そう考えると、事件そのもののインパクトも相まって、非常に興味が沸いて来るのだ。

 私は、事件が何故起こったのか、という問いには二つのアプローチが可能だと思う。一つは事件に関わったメンバーの個別の事情を追いかけて事件にたどり着くまでの変遷を追う手法であり、もう一つは個人にはほとんど注目せずに事件が起こるシステムについて様々な分野から解釈していく手法である。このうち前者は多くの論者が行っていることではなかろうか。

 つまり、「事件は森恒夫というもう後がない人物と人格に問題のある永田洋子という2名の異常者が起こしたことだ」というようなものだ。特に永田は判決文にもこのような決め付けが行われている。しかし、それでは説明がつかないことが余りに多すぎる。
 例えば共産党はこれまでとっていた路線から転向する時には、必ずや指導者の「家父長的性格」が諸悪の根源であり、それによって党全体が誤った方向に歩んでしまったという失脚した幹部への責任の押し付け(そしてその裏返しとしての自らの責任回避)が行われるが、その新たなる路線が誤っていてもやはり次の指導者の「家父長的性格」が問題となる、というように永久に正常化できないシステムをとっている。それはそれで信者の離反を招かないためには必要不可欠なのかも知れないことではあろう。が、その独善性ゆえにやせ細っていき、今回の選挙でも惨敗した(惨敗した他の政党、新保守党は解党して自民党に吸収され、社会党は長年党首を務めた土井が辞任するなどそれなりに責任をとったが、共産党のみ何の動きも無いのは極めて興味深いことである)ことにつながっているように思われる。
 これを見ても、一部の指導者に責任を押し付けてそれで良しとするのでは問題の真の解決にはならないであろう。

 翻って、後者の方法である。この方法だと、木を見て森を見ずという議論になりがちである。結局悪いのは社会だったり人間の心理的な問題だったりで、そこに関わった人間個人に光が当てられなくなってしまう。連合赤軍事件では森、永田(そして他の参加者達)の性格が大きなウェートを占めるはずであり、それを無視してしまっては社会が悪かったんだから森君も永田さんもかわいそうな被害者なのよ、という、じゃあ悪いのは具体的になんなのかという良く分からない無責任なところに拡散してしまうように思われるのである。

 この本では、事件に至った顛末を3つの要因から説明しており、それが上手く前述の前者にも後者にも偏らないものとなっており、その点で非常に重要に思われる。勿論、森という一人の(左翼運動の中でも追い詰められていた)リーダーに多くの責任があるのは当然としてもそれだけでは収まらなかった要因がしっかりあるのだ、という視点を提供することで冷静に事件を総括しているように思われるのである。

 連合赤軍事件に興味がある方は、一読をお勧めしたいと思う(ただし、今更連合赤軍と思われる方も多いだろうと思われることから評価は低めに設定)。また、紹介したサイト連合赤軍と「二十歳の原点」に目を通しておくことをお勧めしたいと思う。

ノンフィクション | 2004/01/12(月) 14:31 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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