犬塚 則久著
日本放送出版協会 (2006.6)
\1,071
評価:☆☆☆
哺乳類にとっては幸いなことなのだろうけれども、研究者には不幸にして恐竜は絶滅してしまっているので、恐竜の研究は化石を対象とせざるを得ない。もちろん、その生態を探るのに現生の動物たちが参考になっているのは事実なのだけれども、恐竜たちがどう生きたかはやはり骨から見るしかないのだ。
骨からどんなことが分かるのか、というと、これが驚くほど色々わかるのだ。たとえば恐竜がどのような環境で生き、どのような姿勢をとっていたか。
私が子供の頃などは、ティラノサウルスはゴジラ型の立ち姿で知られていた。両足と尻尾の3点で地面に接し、直立した頭は遥か高みにあった。しかし、今ではそのような姿は否定されている。映画としての出来はまあ措いておくとして、アメリカ版ゴジラのようなダイナミックな姿勢をとっていたとされている。
これらの知見が得られた背景に、骨学がある。骨同士がどのように繋がりあうことでどのような動きを実現できたのかを、かなり詳しく説明できる学問である。本書を全て理解すれば、きっと博物館や恐竜展などで見取ることのできる情報が飛躍的に増えることだろう。
ただ、本書の難点は分かりづらいところにある。関節の仕組みや動作などは図示してくれれば分かりやすくなっただろうに、ほぼ全て文章で説明されているためどうしても頭に像を結ぶことができないのだ。
そういう点で、本書は私のような初心者(あるいは広く浅く型)向けでは無い。体の仕組みに関しての基礎的な知識があれば随分と楽しみ方が違っただろうにと思うと大変に残念だった。逆に言えば、そのあたりの知識を持っている方であれば恐竜の生きた姿を頭の中で生き生きと描き出せる素晴らしい本だったのではなかろうか。
そんな欠点はあるが、それでも多くの知見を紹介してくれている本なのは間違いないと思う。理解できないところは読み飛ばすくらいの積りで面白い話題だけを追いかけても楽しめるように思う。恐竜博などに行く前に目を通しておくと、きっといつもよりも発見が多いと思う。
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NHK「恐竜」プロジェクト編 / 小林 快次監修
ダイヤモンド社 (2006.7)
\2,520
評価:☆☆☆☆☆
6500万年より更に昔の時代、恐竜と哺乳類は共に生きていた。といっても、多くの人がイメージするとおり、恐竜は絶滅するまで地上の支配者であり続けた。大まかには、当時の哺乳類は恐竜の魔の手を逃れて細々と生活してきたと言っていいだろう。
実際、哺乳類は恐竜の活動しない夜に生活の場を移したと推測されている。その結果、哺乳類は色を判定する能力を失った。鳥類は4原色を持つ対し、哺乳類のほとんどは2原色。闘牛の牛は赤い布の色に反応しているわけではなく、ひらひらした動きに反応していると言われるのは、牛も恐竜時代の影響を引きずって色を見分けることができないことによる。再び3原色を取り戻し、色の世界に生きるようになったのは一部のサル類しかいない。(このあたりの話は111冊目で紹介した『眼の誕生』に詳しい。)
色の話もそうなのだが、意外なことに哺乳類の進化に恐竜は大きな影響を与えてきたことが分かってきた。恐竜と哺乳類が共に生きた時代に、それぞれがどのような進化を辿ったか、互いの進化にどのような影響を与えたかを俯瞰する。
最新の恐竜学の知見が豊富に盛り込まれていて、有名どころの恐竜たちがどのような進化戦略を持っていたのかが第一の魅力。第二は我々の先祖である、哺乳類がこの期間に手に入れた多くの戦略を恐竜のそれと比べながら見ることができること。NHKスペシャルのめの取材から生まれた本なので図版が多いのも魅力である。
30m以上にもなる恐竜がなぜ誕生したのかを環境面から探り、恐竜を食べる哺乳類がいたことに驚き、ティラノサウルスの狩りの実際に迫る。画像を多用しており、情報が詰め込まれているわけでもないのでさっと読めるのだけれども、知識は豊富なので読後の満足感は十分。
個人的に印象的だったのはこの言葉。
「ほ乳類が獲得した鋭敏な耳、大きな脳、胎盤という繁殖戦略は、恐竜の支配がなければ、けっして実現しなかったでしょう。その意味で私たちは、それらの進化を強いた恐竜に感謝すべきなのです」
(P.268)
恐竜が絶滅したから哺乳類の天下になって我々が生まれた。そんな単純なシナリオではなく、もっと複雑で魅力的な歴史が展開されていたことを教えてくれた大変面白い一冊。
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ドナルド・ゴールドスミス著 / 加藤 珪訳
サンケイ出版 (1986.8)
\1,470
評価:☆☆☆☆☆
ネメシスという名に聞き覚えがある方はオカルトか神話のファンだろう。私にはオカルトで聞いた記憶があった。実際、『フォトンベルトの真実と暗黒星ネメシス』だとか『恐竜大絶滅の謎と木星ネメシス』(出た!飛鳥昭雄!!)だとかを見れば怪しい匂いを感じざるを得ない。もちろん、怪しい本だろうと思いつつ読んだのであるが、期待に反して大変面白い本であった。
考古学的な証拠によると、おおよそ2600〜3200万年という周期をもって生物の大絶滅が見られるという。ひとことに2600万年と言うのは簡単だが、3000万年近い周期で起こるなにかの正体を突き止めるのは大変なことである。
この長い周期を説明するために著者が目を向けたのは宇宙。そう、恐竜を絶滅させたのと同じ、大隕石の衝突が周期的に起こっているのではないかと指摘する。事実、地上には多くのクレーターがあり、この周期に作られたと思しきものも少なくないようだ。
だが、なぜそんなに規則正しく衝突が起こるのか。まさかガミラス帝国がその周期にあわせて流星爆弾でも落としてきているわけもあるまい。だとしたら、何か理由があるはずだ。
著者らが主張するのは、2600万年周期で太陽の周りを巡る太陽の伴星が、太陽系を覆うように存在する“彗星の巣”、オールトの雲を撹乱しているのが原因ではないか、ということ。この撹乱によって億単位の彗星が太陽系内部に侵入、各惑星を爆撃することになるとする。従って、伴星の公転周期が絶滅の周期となるという理論だ。
本書はこの太陽の伴星・ネメシスが存在する可能性を指摘し、なぜネメシスを想定することが有利なのかを懇切丁寧に解説している。
そもそも本当に生物の絶滅周期があるのか。仮にあるとして、原因は宇宙ではなく地球にある可能性はないのか。宇宙からの爆撃が絶滅の原因だとして、その爆弾の正体は何か。ネメシスが実在するとしたらそれはどのようなものか。
正直、その存在は余りにご都合主義的に感じられてしまうのではあるが、それでも仮説の面白さは特筆できる。ネメシスが存在しないにしても、読む価値は十分にあると言える。仮説の面白さと、生物絶滅という大きな謎を解き明かす面白さを味わえる本。
ただ、この説には強固な反対論もある。2600万年周期を持つ伴星は、最も太陽から離れる遠日点においては太陽よりも他の恒星の重力を強く受けてしまい、その軌道を保つことができないのではないか、ということのようだ。いずれにしてもこの仮説は観測技術の向上によって白黒はっきりするはずなので、それまではネメシス仮説も一応生きていると思って過ごすのが楽しいように思う。
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評価:☆☆☆☆
恐竜の定義はご存知ですか?
恐竜のいくつかの種を知っていても、肝心の恐竜とは何かということはなかなか知られていないのではないか。その結果、恐竜について知っていることといえばティラノサウルスって肉食だったんだよね、というレベルに留まってしまう傾向があるだろう。
おまけに、ジュラシック・パークという見事なタイトル(皮肉ではなく、恐竜の生きた時代と一瞬で知覚さ、せ興味を惹き付ける点で抜群の効果があったと思う)に騙されて、ティラノサウルスとかオヴィラプトルとかはジュラ紀の恐竜だと思われているかもしれない。しかし、彼らが生きたのはジュラ紀よりももっと後、白亜紀の後期のことである。
え?マニアック??
そんなことを思うヒトは本書を読む資格にはなはだ欠けると言っていいでしょう。なにせ、この本は一般書でありながら恐竜学の最先端を追いかけているのだから。とはいえ、書かれたのが1993年と随分古いので、時代の流れを感じさせずにはいられない。それでも恐竜に関する学問的な探求の一端を垣間見ることができて、それが嬉しい。
骨の形態から見る種の位置づけや進化の流れを
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中沢 弘基著
新日本出版社 (2006.4)
\1,995
評価:☆☆☆☆
生命はどのように誕生したのか。”鶏と卵のどちらが先か”を問い詰めれば、最後はこの問題に行き着くだろう。しかし、生命が誕生したのはあまりにも遠い過去であり、説得力のあるシナリオは困難だった。そこで生命を生み出した存在として神が仮定されたのも無理からぬことだろう。
ところが、ミラーらがアンモニアやメタンで満ちた地球では雷が生命の元になるアミノ酸を作り出すことを示したことから生命の起源について科学的な調査が本格化することにある。
現在では、太古の海でDNAが誕生するに先立ってRNAが遺伝情報を担い、増殖を重ねていたと信じられている。特に酵素としての働きをも併せ持つRNA(このRNAをリボザイムと呼ぶ)の発見が決定的だった。一般には。
しかし、そんなシナリオに重大な異議を申し立てると同時に、大変興味深い別のシナリオを提示する説が現れた。
生命誕生の舞台が海と想定されたのは、水が多くのものを溶かし込む能力を持つからだ。しかし、海の中にはメリットだけではなく巨大なデメリットがある。海の中で有機物が合成されたとしても、多すぎる水によって分解してしまう(これを加水分解という)。つまり、海の中では単純なアミノ酸は生まれても、複雑な分子は生まれない。ということは、RNAワールドを仮定するのは無理があるのではないか。
どこで生物は誕生したのか。我々は再び神による創造に回帰するしかないのか。
そうではない、というのが面白いところ。生命は海の中ではなく地下で発生したのだ、というのが本書の主張である。
アミノ酸の生成として意外なシナリオを提示し、それを実験で示しているところは推理小説を読んでいるのに近い感じがする。このあたりはぜひ本書を手にとって読んでいただきたい。
生命が地球独自のものかもしれないと示唆するあたりは承服しがたく、その点を中心に筆者の論に全面的に賛同することはできないが、生命の起源について興味を持つ方にはお勧めしたい。驚きとともに常識を覆される楽しみを味わいつつ、楽しんで読めると思う。
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